2009年 05月 26日
日米同盟の正体・・・タチの悪い親方との付き合い方?
日米ともども、頭が痛いですね。
日本は隣のならず者が核を持つという事実にどう対応するのか?
アメリカは、対中東政策優先一辺倒姿勢を改めるのか?
他人事ではありませんが、注目すべき時ですね。
ちぇりーさん、この事態を予想していたわけではないのですが、そんなことに思いを巡らすのに打ってつけの本とご縁をいただきました。
これ凄い本です。
日米同盟の正体 講談社現代新書
北陸遠征の帰路、しらさぎ号の車中で読みましたが、実はこれも1ヵ月以上積読状態だったんです。
先月藤原さんのインターネットラジオでも紹介されていましたし、師匠はMLで、人見さんも日記で紹介されていましたので、まとまった読書時間を確保できるタイミングを見計らっていました。
その内容は、正直ヤバ過ぎだと思います。
著者は孫崎享(まごさき うける)さん。
外務省で英国、ソ連、イラク、カナダ勤務を経て、ウズベキスタン大使やイラン大使、国際情報局長を勤め上げ、この3月まで防衛大の教授を担当された、元官僚です。
早速得意の転載をしてしまいますが(汗)、“はじめに”でも、
「事実は語る」。これは、本書を記述するにあたって、筆者が最優先させた哲学である。この本が感情や特定のイデオロギーにとらわれることなく、「事実は語る」を基礎に日本の安全保障を論ずる際の叩き台になれば幸いである。<p17>
と、宣言されているとおり、驚愕の事実が列挙され、その事実に基づいて論じられているため、大変説得力があります。
まずわれわれが知らなければいけないことは、「日米安保」と「日米同盟」は全く異なるものだという事実ですね。
もちろん、読書の鉄則である、鵜呑みをしないことは大切ですが、そのことは著者ご自身も“おわりに”でわかりやすく結ばれています。
読者と筆者とでは、主張点が異なるかもしれない。今日の日本の政治の流れや論調を見れば、それがむしろ自然である。その中で読者が筆者の紹介した事実や考え方に接して、ちょっと待てよ、この事実に基づくとこれはどうなっているのだと再考される糸口になれば幸いである。<p261>
そんな意味で、同じ“おわりに”で語られていることには、この国はホントに大丈夫かと思っていたちぇりーさんに、僅かながらも勇気をいただけました。
戦後の日本は、自らの選択ではなかったが、軍事を捨て経済に特化するというモデルを採用した。結果として、グローバリズムが深化し、経済の相互依存性が高まる中で、この行き方が自国の安全を確保する手段となっている。これはキッシンジャーなどが予想しなかった安全保障政策である。
☆防衛費に相当な税金を投入しているではないか、単なる結果論ではないかと、短絡的に考えられる方は、まずこの本を読んでから文句を言いましょう(苦笑)!
振り返ってみると、戦後日本は国家の行き方として新しいモデルを構築した。そして日本は自己の経済力を高めるにつれ、外交を活発化させた。その中で自己のモデルを他国に押しつけてはいない。しかし、日本と同じモデルを志向するなら、その自助努力を支援する態勢をとった。恵みではない。支援である。
今日、日本くらい、国内秩序が優れた国は世界中にほとんどない。昭和30年代の日本は、経済成長の過程で、鉄鋼や自動車などの重要産業分野で国際水準に追いつく努力をする一方、弱者を国際的にも国内的にも見捨てなかった。
国内では、地方、農村、中小企業等弱者支援のシステムを作った。国際的には、円借款で発展途上国が自ら立ち上がるのを助けた。1960年前後、日本は自分自身が苦しい中、懸命に弱者の国を救うシステムを作った。円借款もその一つである。弱者の立場に立った者に暖かい目を向ける、仮に現時点で非難され所があっても、前に進む余地があれば助けるという姿勢が、かつての日本外交にはあった。
・・・・・・
かつての日本外交は、悪と判断された国も切り捨てるのではなく、西側の価値観を共有できる国へ誘導することを目指した。この努力は今日の日本に対する好意的視線を形成する上で貢献した。
支援の中核となる円借款の貴重な資金源は郵便貯金であった。しかし、日本は郵政を民営化した。地方、農村、中小企業の弱者支援システムは今後崩壊していく。われわれは本当に弱者救済のシステムを捨てなければならなかったのであろうか。将来、弱者切り捨ては社会不安として必ず反動が出てくるだろう。
過去の日本的行き方は国際的にも評価されてきた。世界で最も望ましいと見られる行き方かもしれない。日本が持つ日本的なものの価値を見直してもよいのではないか。
・・・・・・
現在日本は米国と安全保障をどうするかの岐路にある。・・・・・・ただ、米国に追随しない場合、何らかの報復を受ける可能性はある。
<p248~p253>
☆流石に人の文章をここまで入力すると肩が凝りますね(苦笑)。
この10年程で、変えなければいけないもの、変えてはいけないもの、を大きく取り違えてしまったのでは、と改めて感じますね。
その責任を、一人のライオン丸のような政治家に押しつけるのではなく、反省すべきは煽動したマスコミとそれに乗せられた民度の低い国民、そしてその悪い流れを作ってきた輩達にあるのだと。安全保障あっての健全な経済、健全な経営という当たり前の事実に考えさせられる1冊です。
著書の孫崎さん自身が、その立場において官僚としてどのように改善行動をとったのかという事実はよくわかりませんが、とにかく面白かったです。
そして歴史を知ること、学ぶことの大切さにも気づかせてくれます。
選挙が近づく今こそ、全ての国民・有権者に一読していただきたい。
それにしても、抜粋ばかりで、相変わらず筆力に乏しいなあ、と少し自嘲気味に反省するちぇりーさんです。
それでも、こういう本と出会えるから読書は止められないですよね(笑)。
ではでは。
by cherrylayla | 2009-05-26 05:22